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#196 史上最強のスプリンター「ウサイン・ボルトについて改めて思う」

 世界一かけっこが早い人は?今やそう問われれば全世界の人が「ウサイン・ボルト」と答えるだろう。陸上競技の花形である100m走、200m走、4×100mリレーの3種目で世界記録をもち、2008年の北京オリンピックを皮切りに2015年までの世界陸上とオリンピックではフライングで失格になった大邱大会の100m以外の3種目で優勝を続けている陸上短距離界、ひいてはスポーツ界の英雄である。

 そんなボルトがまた偉業を達成した、8月15日に行われたリオオリンピック100m走決勝にて9秒81の記録で優勝。北京、ロンドン、リオの3大会連続での金メダルを獲得。100mでのオリンピック3連覇は史上初の偉業であった。瞬発力と筋肉量がものをいう陸上界における選手寿命は短い。早ければ20代後半には引退を表明する選手も少なくはない。そんな中ボルトは今年30歳、リオオリンピック後の引退を示唆する発言は行っていたものの、この年齢でオリンピックの短距離走で金メダルを獲得するということ自体異常と言って差支えがないのではないだろうか。

 私が何よりボルトに敬意を抱いているのはその速さはもちろんのことなのだが、何より2008年以降の世界大会の出場競技においてほぼすべてで優勝している点である。もちろん100mの9.58と200mの19.19の2つの世界記録を持っている人間が負けるわけがないというのは簡単だろう、だがどんな選手だって怪我やコンディション不良などで常に100%の力で走れるわけではない。特にボルトは先天的な脊椎の側弯症により肉離れなどの故障が多い選手でもある。しかも今回のリオオリンピックの国内予選も怪我により走ることさえできなかったのだ。そんな中で本番への調整力はもちろんだが、大舞台での圧倒的な強さや強靭なメンタルはまさに「史上最強」、今回のタイトルを「史上最速」にしなかったのもその強さに敬意を表してのものだ。まさに国際大会負けなしの男が今回も見せた見事なパフォーマンスにはただただ感服するほかない。
 さらにはその高潔なアスリートとしての精神も持ち合わせているというところ、相手への称賛は欠かさず、他国の国家斉唱が別トラックであってもインタビューを中断し斉唱終了まで耳を傾ける。ファンにはお決まりのライトニングポーズで決め、会見では小粋なジョークで記者も沸かせる。競技者、メディア、ファンすべてに気を配るその姿はまさに理想のアスリートと呼べるだろう。

 日本人スプリンター初の9秒台の期待がささやかれている昨今、この男はそれよりも0.5秒先にいる、距離にすればおよそ7m先だ。ただ一人9.7、9.6の壁を破ったボルトは陸上の歴史を20年縮めたと言われる。しかしこのままではボルト一人が20年先の未来からやってきただけで終わってしまう。ボルトに匹敵するスプリンターの出現を東京オリンピックでは期待したい。最後の4×100mリレーで走るボルトの姿は、もしかすると我々が目撃する走るボルトの最後の姿になるかもしれない。

伝説の稲妻が走る姿を最後に目に焼き付けておきたい。
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テーマ : 陸上競技
ジャンル : スポーツ

#195 昭和最後の大横綱「千代の富士」

 7月31日、夕食を食べ終え席を立った時、衝撃のニュースが飛び込んできた。元千代の富士、九重親方の死去のニュースだった。その場にいた父と祖母にそのことを告げると、一様に「そんなバカな、千代の富士が死ぬかよ」という声が上がった。この反応こそが氏の凄さを物語っているのだろう。
 幕内優勝31回、生涯勝利数1045勝、幕内53連勝の大記録をもち、昭和最後の大横綱と呼ばれ、絶大な人気を誇った。角界で初の国民栄誉賞を受賞した人物でもある。

 千代の富士は力士のイメージを変えた人物と言っていいだろう。従来から現代まで続く力士の体格からは一線を画したスタイルと言っていいだろうか、現役時は183cm、126kgと力士の中では小兵の部類に入る体格、しかしそれでいて千代の富士が強かったのには理由がある。現役時の画像を見ていただければ一目瞭然ではあるだろうが、とにかく筋骨隆々、鋼の肉体というのはこのこと、でっぷり太ってお腹のでた力士のイメージ像からかけ離れた存在、現役時の体脂肪率は衝撃の10.3%、体重126kgに対してたったの10%だ。特に鋭い目つきと端正な顔立ちから「ウルフ」というニックネームも持ち、今までの力士像からかけ離れたかっこいい力士というイメージを定着させた。

実は力士の体形は大きく二つのパターンに分けられて呼ばれている。ひとつが「アンコ型」、みなさんのイメージする力士像は大抵こちらに該当するだろう。現役の力士で言えば琴奨菊や豊ノ島、千代鳳などが該当するだろうか。大きなお腹で相手の前まわしを取らせづらくし、お腹に相手を乗せて踏ん張りにくくする取り口などがみられるだろう。ただ見た目通り体重がかなり重くなる傾向にあるため、膝の故障率が高くなるケースが多い。数としてはこちらの方が圧倒的に多いだろう。
そしてもう一方が「ソップ型」と呼ばれるタイプ、古くは初代貴乃花を始め、寺尾、琴欧洲、現役力士で言えば日馬富士がこちらのタイプに含まれるだろう。筋肉質でやせ形の力士が該当する。大抵の場合が体質的に太りにくいタイプの力士がこちらの型になっていくケースが多い。相撲のルール上体格がものをいうのは間違いないが、その体格で勝る相手を倒すシーンは大相撲の一つの醍醐味と言っていいだろう。

そして千代の富士もこちらのソップ型に該当する。言うなれば史上最強のソップ型力士といっていいだろう。千代の富士があれほどまでの筋肉を手に入れたのは、一重にトレーニングと猛練習のたまものであったわけだが、一つの切っ掛けとして自身の脱臼癖があった。先天的に肩関節のかみ合わせが浅かった千代の富士、幕下と幕内を行き来していた頃は体が出来上がっておらず、無理な投げを打ち良く脱臼をしていた。ある日全治1年と言われるほどの重度の脱臼をしてしまった際、医師から肩周りの筋肉を鍛えることである程度脱臼癖を抑えることが出来るとのアドバイスを貰って以降、猛烈な筋力トレーニングに励むことになる。この際に千代の富士は角界ではまだほとんど行われていなかったウェイトトレーニングも導入しながら毎日の腕立て伏せ500回を行っていたといい、あまりの猛練習に千代の富士の部屋の畳はすぐ傷んでしまい、3ヵ月に1度張り替えるようになっていたという。

そして脱臼癖は千代の富士の取り口にも変化を与えた。無理な投げを打ち、安定した相撲を取れていなかった千代の富士だったが、前まわしを取って一気に相手を寄り切る高速の寄せの型を作りあげた。猛烈な筋力トレーニングによって千代の富士の体は見違えるように厚みを付け、体重で勝る相手にも寄り切る力をつけたことが奏功し、この型で勝ちを重ねていった。
幕内上位の位置が安定しだしたころ、81年の1月場所を迎える。この時千代の富士の番付は関脇、怒涛の快進撃で初日から14連勝を飾り一躍優勝候補へ踊りでた。千秋楽は13勝1敗で後を追っていた横綱北の湖との決戦。この一戦は北の湖が体格を生かした吊り出しで千代の富士を破り14勝1敗同士の優勝決定戦に持ち込んだ。
千秋楽の一戦で北の湖が足を痛めたところを見逃さず、優勝決定戦では北の湖の周りを回るように攻め、上手出し投げで勝利をおさめ初優勝を飾った。この優勝決定戦の注目度は非常に高く、最高視聴率は65.3%を記録し、いまだにこの数字は大相撲中継の最高視聴率として記録されている。
この優勝で大関昇進を果たした千代の富士は翌3月場所を11勝4敗、5月場所を13勝2敗で優勝次点の記録、そして7月場所に14勝1敗で2度目の優勝を飾り、一気に横綱まで駆け上って行った。81年は関脇、大関、横綱と3つの番付で幕内優勝を飾るという史上初の記録をを残し、日本中を沸かせた。

それからというものの絶対的な強さで土俵を支配しつづけ、10年間にわたり横綱を勤め上げた。先述の大記録は30を超えてから全盛期が訪れた非常に珍しい晩成型だったこともあり、長く相撲を取れたことが要因と言っていいだろう。

千代の富士を語るうえで絶対的な強さはもちろんのことだが、やはり潔さという面も見逃せない。引き際については横綱に昇進した日に師匠にあたる北の富士から潔く引退しようと交わしており、そのXデーは91年5月場所で迎えることになる。
初日から千代の富士対貴花田(後の貴乃花)の取り組みが組まれ、まさに世代交代を予感される一番となった。初対戦となるこの組み合わせで千代の富士は長丁場の末、強引に押し出され敗れる。その後3日目に貴闘力にも敗れ引退を決意、引退会見では「体力の限界、気力もなくなり引退することになりました」と振り絞るように語った。
 
そして引退後は紆余曲折を経て九重部屋と年寄名跡九重を継承、大関となる千代大海を育て上げ、更に幕内に千代鳳、千代丸、千代大龍、千代の国と4人の力士を送り込んだ実績も十分だった。
この先、九重の名跡は佐ノ山親方(元千代大海)が受け継ぐ予定となっている。「千代」の名が、それこそ千代に続くように、九重部屋の力士には頑張ってもらいたい。

大相撲に大きな足跡を残した「小さな大横綱」。死してなおその偉大さに胸を打たれるようだ。また氏のような強い日本人横綱が生まれる日を夢見て締めさせていただこう。

テーマ : 大相撲
ジャンル : スポーツ

#194 さあ波乱はあるか「セ・リーグ前半戦を振り返る」


 去る7月16日、プロ野球界の一大イベントであるオールスターが開催された。ヤフオク!ドームと横浜スタジアムで2試合が行われ、多くのホームランも飛び出すファンを沸かせる試合内容となった。ペナントレースにおいてオールスターはシーズンの折り返しと呼ばれる。正確に言えば143試合中の71試合目と72試合目が折り返しになるのだろうが、球界ではオールスターの前後が目安になっている。(おおよそだが前半80試合、後半60試合というような内訳になることが多い。)

 そして後半戦に移り、ペナントレースはより熾烈を極めていく戦いになる。では今のところのセ・リーグペナントレースを振り返ってみよう。

まずは順位
1 広島
2 巨人
3横浜
4阪神
5中日
6ヤクルト
8月1日現在

交流戦明けからこの順位が続いているように思う。パリーグ相手に貯金を作った広島が一歩抜きでて、2位と10ゲーム近い差をつけて独走している。勝利数も圧倒的だ。数字をみてもチーム防御率、チーム打率ともにリーグトップ。その他あらゆるスタッツで広島が他5球団を圧倒している。7月好調の原動力は新井貴浩、月間打率は4割4分、驚異的な勝負強さで打点を稼ぎ、山田を猛追している。先発にもやや疲れが見えているのだが、恐ろしいことに打線がしっかり取り返しに来るため逆転勝ちが多い、阪神ファンはもう広島を見たくないことだろう。

 続くのは巨人、やはり試合巧者ぶりが光るというか、勝具強さは歴史が積み重ねたものだろうか、広島以外で唯一貯金がある球団でもある。打線がひどいと噂だったが盛り返しつつある。長野1番阿部4番のオーダーに戻してから好調気味だ。それに合わせて先発陣の頑張りも光る、内海も昔の姿を取り戻しつつあり、マイコラスも復調気味ということで、この後半戦頼りになるカードが揃ってきた。中継ぎ陣がお疲れ気味だが、宮國がいいピッチングを重ねており、急場をしのいでいる。メークドラマの再来とささやかれているが、さすがに厳しいとは思うものの、少し広島にも疲れが見えてきていることもあるし、なんといっても7月は14勝7敗の貯金7で終えているというのもある。さあ10月に笑うのは誰だ。

 3位にはなんと横浜が食い込んできている。31日時点で48勝48敗の5分に持ち込み巨人とは2ゲーム差までせまっている。4月最下位、5月に猛チャージ、6月失速、7月チャージと躁鬱のようにチーム状況が変わるおかしなチームだ。今は5月に猛威を振るった投手陣もお疲れモード、今永とモスコーソを2軍に落し、山口が足首捻挫で3週間ほどの離脱と絶望的なニュースが飛び交ったが、ここでチームを救ったのはペトリックと筒香だった。シーズン頭に中継ぎ登板でイマイチだったペトリックがここで先発として登場し、2連勝を飾った。一試合目は5回2失点だったものの、自ら2点タイムリーを放ち取り返した。2試合目は5回無失点の上々なピッチングを見せた。長いイニングが投げられないのは欠点だが、7月のチーム防御率が5点台に届きそうな横浜にあって、3試合連続で5回を2失点以下で抑えており、重要なピースになっている。そして何より湿っていた打線が爆発しているのが今の横浜の強みだろうか、7月の月間MVPの最右翼に躍り出た4番筒香嘉智の活躍を抜きにして語れない。月間16本塁打、5割近い打率を残している。オールスター明けのヤクルト戦から巨人戦にかけての3試合連続マルチホームランは史上初。しかもそのホームランも先制、決勝、勝ち越し、サヨナラと殊勲打ばかり、29日の広島戦では月間6度の1試合2本塁打の新記録を打ち立てた。月初には山田と10本差あった本塁打もついに2日の広島戦で追い越した。7月に入るまで山田の10冠(打率、本塁打、打点、盗塁、最多安打、最高出塁率、最多四球、最高長打率、最多塁打、最多2塁打)が話題になっていたが、ここにきて打撃主要3部門すべてで筒香が追い抜く可能性が出てきた。日本人同士で三冠を奪い合うハイレベルなタイトル争いが見れるのが一体いつ振りだろうか。

4位は阪神、7月に入り失速モードに入ったかと思いきや、中日ヤクルトの急降下と打線の好調が手伝い、何とか4位に盛り返してきた。最大の懸案事項であった鳥谷の連続フルイニングもついに終わりを迎え、ゴメスの復調も手伝い打線が活況となっている。一時期5ゲーム差開いていた3位との差もじりじり詰めて3ゲーム差まで上がってきた。
しかし阪神にまたもや試練が降りかかる。8月に突入するということは甲子園が使用できない死のロードが待っているということ。今年は甲子園であまり勝ててないことを思えばむしろ良い可能性も否定できないが・・・さあどうなる。

5位は中日、おそらく7月もっとも苦しんだチームだろう。月間8勝15敗で7つも借金を作ってしまった。なんというかとにかく投打がかみ合わないという印象。7月の8つの勝利のうち7点以上入れて勝った試合は5試合。大量得点試合の時は投手もしっかり抑えているのだが、いかんせん負け試合でもロースコアゲームが少ない。投手陣が崩壊寸前のところまで来ている印象だ。5失点以上した試合は11試合あったが、そのうち勝ったのは1試合だけ、一方同じように7月炎上しまくった横浜も5失点以上は12試合あったが、それでも4試合勝っている。そもそも横浜は7月14勝9敗で終えているが負け試合で5失点以下は1試合しかなく、炎上と好投がはっきりしているある種潔い内容となっている。高橋周平の1軍復帰もつかの間、このまま落ちていくわけにはいかない。投手陣の踏ん張りが期待される。

6位はヤクルト、一時4位にまで浮上してきたのだが7月最後に6連敗を喫し急降下。8勝14敗と6つの負け越しとなった。ヤクルトの7月も呪われてると言っていいかもしれない。主軸を務める川端と雄平の負傷離脱に加えて、数少ない勝ち継投であるオンドルセクが退団と絶望的なニュースが並んだ。今や山田とバレンティンがいなければどこのチームかわからないと言っても過言ではないラインナップに変貌。山田も腰や足にダメージが蓄積していることを以前より話していたが、その影響か7月はホームランも4本で終え、打点も12で終わり山田独走態勢が終わりを告げた。絶望的な状況だが盛り返すことはできるだろうか。


ざっと振り返ってみたが、AクラスとBクラスにまさに明暗分かれたという感じだ。巨人と横浜は対広島を5割以上で戦っており、独走を止めるにはBクラスの球団の頑張りが必要になってくる。果たして広島は逃げ切れるのか、勝負の8月が始まる。
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Author:ppsnuwa
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