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#199 大願成就「今年の横浜DeNAベイスターズを振り返る後編」



そしてシーズン折り返しにあたる7月、頼れるキャプテンのバットが火を噴く。6月終了時点で16本塁打をマークしていた筒香、対する山田は26本をマークし独走、本塁打王はもうすでに決まったものと思われていた。どうしても比較されやすい両者だったが、山田が交流戦でパ全球団からホームランを放つなどド派手な活躍をしていたこともあり、16本中15本をハマスタで打っていた筒香は「ハマスタ専」のレッテルを貼られていた。しかし筒香はこの7月、周囲の度肝を抜く活躍を見せる。月間成績は.429 16本 31打点という衝撃の数字が並んだ。月間16本は球団記録、7月19日20日22日の3試合で史上初3試合連続1試合2ホーマーと月間6度のマルチホームランの2つの日本記録を打ち立てた。さらにはこの月に行われたオールスターでも2ホーマーを放ち圧倒的な存在感を見せつけた。夏場に差し掛かり投手陣に疲れが見えてきたこのタイミング、筒香の勢いに引っ張られるように打撃陣全体が上向き、打撃戦をものにすることが出来た。そして個人成績でも、10本差つけられていた山田に追いつき、本塁打王争いのトップに立ったのだ。
7月はチーム防御率が大きく落ち込んだものの、打線の頑張りもあって14勝10敗と四つの勝ち越しを決めた。 

一抹の不安を感じつつ臨んだ8月、後半戦はエース山口不在の中始まった。このあたりからついに中継ぎ陣に綻びが見え始める。絶対的守護神だった山崎康晃の不調が深刻化してきたのだ。8月頭の阪神戦。この3試合、3タテ出来たはずの試合運びだったが、その内2試合で山崎が打ち込まれ逆転負け、さらには次のカードの中日戦でも山崎が逆転を許した。1週間で3度のセーブ失敗は非常に大きく、いまだかつてないその不調にラミレス監督は配置転換を決断、一時的に須田、田中を日替わりでセーブ機会に登板させる策を取った。7月あれだけ猛威を振るった打線も8月に入ると一気に湿りがちになり、先発が初回に炎上していきなり試合を終わらせてしまうケースも一気に増加した。極めつけは4位阪神と3.5ゲーム差で臨んだ8月23日~25日の3連戦。初のCSに向けて何としても踏ん張らなくてはいけないこの3連戦であまりにみじめな3連敗を喫する。ついぞ迫るは0.5差、明日にでも順位が変わってもおかしくないこの状況で一つ意地を見せたのはDeNAだった。
次の日からの巨人3連戦をなんと3タテで突破する。運よく阪神は3連敗を喫しており、この時点でゲーム差がまた3.5に戻ったのだ。その次の広島戦でも3タテをくらったものの、阪神も同じく泥沼の連敗劇でゲーム差は縮まらず。逆に5位のヤクルトが盛り返し4位を取り戻したのだった。8月は9勝15敗の6つの負け越し、非常に苦しい月だった。

そして4位ヤクルトと2.5ゲーム差で突入した勝負の9月、ここで踏ん張りを見せたのは先発陣だった。9月2日から甲子園で迎えた阪神3連戦、今年のベイスターズは非常に阪神に分が悪くこの時点で5勝13敗と8つも負け越していた。先のカードでも3タテを食らっていたためイヤな雰囲気を持っていたのだが、ここで石田が7回2失点、翌日の山口も7回2失点で2連勝を飾ると、3試合目も今永が好投しロースコアのゲームに持ち込んだ。この3連戦でどこか苦手意識を払拭できたようなイメージがある。続くヤクルトとのCS天王山では裏ローテながら井納が魂の1失点完投で勢いを作ると、三嶋が今シーズン初勝利を挙げる6回3失点で苦手小川に投げ勝つ。しかしまたしても3戦目に好投石田の勝ちを田中が消してしまう。とりあえず無事2勝1敗で勝ち越し、ヤクルトにプレッシャーをかけた。打線もここから調子を取り戻し、投打がかみ合う試合が多くなった。9月13日の試合でヤクルトに大勝し、ここでついにCSマジック6を点灯させた。翌阪神戦も勝ち越し、最後の広島2連戦もロペスの大活躍もあり2連勝を飾り一気にマジックを減らし、無事3位を確定させた。

他球団ファンからすれば、「なんだCSに出たぐらいで」という反応があるかもしれない。しかしこの10年間に味わった屈辱とふがいなさ、昨年味わった呪いのような負けに「Aクラス入りすら夢のまた夢なのか」という気持ちが支配しつつあった。そんな中でようやくつかんだAクラス。チームの成長を見届けてきただけに単純にうれしかった。

今年は若手野手の台頭はもちろんのことだが3割40本100打点を達成した筒香の活躍、自身キャリアハイの30本越えを果たしたロペスの二人の軸がどっしり構えていたのは大きい。そしてショートの倉本も通年で3割打ちながらショートをキープしていたことなど昨年を大きく上回る成績を残した。そして今年何より頑張ったのは投手陣だろう。

まずは山口、開幕前にラミレス監督から早いうちに開幕投手の指名を受けていたものの足首のねん挫で結局お流れになった。ラミレス監督が現役時代に山口を言葉を交わしており、その時に「僕が監督になったら、エースは君を指名する。」というやり取りがあったそうで、その言葉を裏切らない投手起用となった。今季は3度の故障離脱により規定投球回こそ達成できなかったものの、19試合で138回を投げ、平均投球回ではリーグトップクラスの7.2回を記録する。11勝5敗の成績を残すが完投5回、完封3回は圧巻。9回に150kmを投げる抜群のスタミナを誇り、130球までは余裕で投げられると本人は語る。おそらくラミレス監督が一番信頼を置いている投手だろう。シーズン頭は5失点する日などもあったが、シーズン中盤からは非常に安定したピッチングをし、その活躍たるやまさにエース。防御率も2.86と申し分ない数字となっている。問題といえばそのねん挫癖と緩慢なフィールディングだろうか、そこさえ改善されれば12球団でもトップクラスの能力を持っているだろう。今年FAを取得した山口がどのような選択をするだろうか。もしDeNAを抜けるならば、来年は非常に厳しい戦いを強いられることになる。

二人目は石田、昨年シーズン中盤から頭角を現した2年目左腕。今年は開幕から素晴らしいピッチングを展開した。交流戦前までは菅野、岩貞に次ぐ防御率リー3位をキープ。持ち前のキレのあるストレートとチェンジアップのコンビネーションで凡退の山を築く。しかしながらこちらはスタミナが少なく、長くとも7回でマウンドを降りることが多い。後続に勝ちを消されるケースが多く、今シーズンだけでも5度勝ちを消されている。なかなか無援護体質の持ち主だ。そんな中でも150イニング投げたことは評価したい。1年間ローテを守り切った証なのだから、今年は不運にも勝ち星に恵まれなかったが、来年は最多勝狙ってほしい。

三人目は今永、昨年のドラフト1位で入団したまさにゴールデンルーキー。一時は大学NO.1ピッチャーの呼び声も高かったが、故障を経験し横浜が単独指名で獲得。続々と指名回避したチームをあざ笑うかのように好投を繰り広げた。しかし序盤の好投もことごとく味方の貧打に泣かされ、勝ちが付いたのは先発5戦目にして初だった。どうやら対巨人の成績だけは悪いが、その他の球団はすべて1点台に抑えており、特に今年の広島相手に3勝1敗1.65と圧倒的な成績を残している。石田が柔の左腕なら今永は剛の左腕だろう。ストレートやスライダー、カーブを使うそのピッチングスタイルは往年の杉内俊哉を思わせる内容だ。今年注目をさらに集めたのは今永語録と呼ばれるその求道者的な発言の数々だ。「援護がないという言い訳は防御率0点台の投手だけが言える」、初勝利の際には「広島ではなく、過去の自分に勝った」などその自らに厳しく、どこか哀愁のある独特の言い回しは早速プロ野球ファンの注目の的になった。6月末からオールスター明けに掛けて一度休養を挟んだため、規定には少し足りないが、1年目から130イニングで8勝8敗、2.68は非常に立派な成績だと言えるだろう。

先発で言えばこの3人の活躍は非常に大きかった。その他でも規定をクリアした井納は、今年こそ負け越したけれども、来年は2ケタ勝ってほしい。不用意な一発に泣くシーンや、序盤から連打されるシーンもちょくちょく見かけたので、そのあたり修正してほしい。
三嶋は来季に向けていいアピールが出来たのではないだろうか、以前のようなストレートが鳴りを潜めたのは寂しいが、しっかり6回を投げ切って試合を作れることを終盤戦でアピール。来季はローテ入りする可能性も高いだろう。
今期伸び悩んだ印象が強いのは砂田だろうか、シーズン頭はローテに食い込んでいたが、徐々にスタミナ不足と決め球不足に悩まされた。同郷の先輩のヤクルト石川を習って、しっかり投球術と勝負のできる変化球を身に着けてほしい。期待外れだったのはモスコーソと久保だろう。どちらも規定を投げてほしいという期待があったものの、故障で調子が上がらなかったのか、打ちこまれるシーンが目立った。モスコーソは終盤復帰し何とか健在っぷりをアピール、来期に向けて切られることはないだろうが、第一子が生まれたこともあり、頑張ってほしいところ。

そして今年を支えたといってもいい、ブルペン陣だ。

まずは田中健二朗、昨年は後半戦を2軍ですごしかなりのふがいなさを自分で感じていたよう。その反省もあってか今年に懸ける意気込みはすさまじいものがあった。横浜では貴重な左のセットアッパーなだけに、7回のみならず左が続く場面ではスクランブルで登場するシーンも多い、さらには僅差のビハインドでの登板機会も多かった。そんな彼が今年は60試合近く投げてくれたのは非常に大きなポイントだった。9月に入りさすがに疲れが出たか、打ちこまれるシーンも目立ったものの、8月の終わりまで1点台をキープし続けてくれていた。大きく曲がるカーブとスライダー、キレのあるストレートを投げ込む。特にカーブは相手の腰が砕けるような軌道を描き、タイミングをずらす決め球となっている。

そして須田幸太、先発として芽が出なかった須田だが、昨年から中継ぎとして定着。彼も今年60登板を果たした。彼のピッチングで特筆すべきはそのコントロールとストレートのキレだろう。彼のピッチングのコースを見ると恐ろしいほどに外角低めにストレートが集まる。そこを起点にフォークやカットボールで打ち取って行くスタイルだ。今年は自己最速の150km/hもマークし多くの見逃し三振を奪った。須田もスクランブルやビハインドの登板が多く、非常に負担が掛かるポジションだったが見事投げ抜いてくれた。今年は満塁で広島菊池を見逃し三振に切ったカットボールがベストボールだっただろう。

今年全体的に不安を残したのは三上と山崎の2人だった。彼ら二人が1年目に見せた見事なピッチングからは少し残念な場面が目立ったように思う。三上はなんだかんだ2点台に抑えているものの、やはり問題は山崎だろうか。去年の圧倒的なピッチングとツーシームの強烈な変化はなりをひそめてしまった。三者凡退に切った試合の方が少なく、今年は負けが5つもついてしまった。なんだかんだ2人とも60試合に登板しているため、責められないが、もっとできる力を持っているのは横浜ファンが一番知っている。来季はビシッと最優秀ホールドと最多セーブのタイトルをこの二人に持ち帰ってほしい。

そしてビハインドリリーフ陣、ザガースキーがビハインドで一番投げたピッチャーだろうか、とにかくリリーフとして出てくると四球を出す、とにかく出す。勝ち継投で出てこないため負けはなかなかつかないが、防御率は5点台と傷口を広げてしまうケースが多かった。もし代わりになる投手がいるなら連れてきてほしい。小杉は3点台に抑えまあ及第点だが、もう少しイニングを任せてもらえるよう頑張らなくてはいけない。そして一人春先の大変な時期に頑張ってくれた投手がいる、トレードでやってきた藤岡だ。春にやってきて10試合ほど投げて無失点のまま肘の違和感で2軍に落ちてしまった。もし彼が怪我で落ちなければもう少しブルペンが楽になったんじゃないかと思う。昨年活躍した長田や林を欠くという地味に中継ぎが苦しかったDeNA、この急場をしのいだ4投手には頭が上がらない。

そして今年のDeNAを語る上で外せないのは代打成績の良さだろう。8月まで代打成功率3割をキープという異様なまでに頼れる代打陣だった。乙坂山下は4割近い数字を残し、下園はここぞの場面で結果を残した。なぜか白崎も代打で3割以上を残している。そして右の代打の後藤も左投手に弱いのがネックだが、それでも3割近い打率だ。倉本から始まる下位打線でも点が取れていたのは、ひとえにこの代打陣の頑張りだろう。

そして今シーズンやはりDeNAを支えたのはやはり4番の筒香だろう。 .326 43本 107打点(9月25日時点)で本塁打打点の2冠、打率でも3位につけており、圧倒的な打棒を見せつけている。しかも得点圏打率もリーグトップの.389、出塁率も.435でリーグ2位とまさにセ・リーグ最強打者と言っても過言ではないだろう。昨年は.320 26本の数字を残しており、このまま30本打てればいいねと言われていたが、更に筒香は一皮剥けた活躍をしたのだ。昨年までの課題だった広角へ打ち分けるという技術の習得に、筒香は取り組んでいた。プレミア12の終了後、ドミニカのウィンターリーグへ即参戦。メジャーリーガーなども参加するハイレベルなリーグで、ムービングボールやスピードボールへの対策として身に付けたすり足打法。相手の球を見極める時間を長くとることで懐に呼び込み、自然と逆方向への強い打球が打てるようになった。この打法が成熟したのはおそらく6月に入ってからだろう。4月中はなかなか上手く噛み合わなかったのか打率も3割を切っていた。おそらくモノにしたであろう7月以降は前述のとおり、鬼神のような打撃でチームを引っ張った。日本の四番がチームにいるという贅沢さをかみしめたい。

今シーズンも残すところあと2試合、1試合勝てば15年ぶりのシーズン5割以上が決まる。2連勝すれば2位浮上の可能性さえ出てくる。最後の踏ん張りを期待する。そしてCSでの頑張りも期待だ。頑張れベイスターズ。
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#198 大願成就「今年の横浜DeNAベイスターズを振り返る前編」


 9月19日、ついにファンの願いが1つ叶った。横浜DeNAベイスターズが広島東洋カープを3-1で下し、11年ぶりのAクラスと初のクライマックスシリーズへの出場を決めた。今回はDeNAベイスターズの今年の戦いを前後編で振り返りたいと思う。


ここ10年間で7度の最下位と2度の5位とまさに暗黒真っただ中にあったベイスターズだったが、11年オフに親会社がTBSからDeNAに変わり、少しずつ風向きが変わってきた。巨人OBの中畑清氏を監督に招聘、まずは雰囲気や体質から変え始めた。そして一新されたフロントは高田繁GMをトップに据え、5か年計画でチーム作りをスタート。当初は打力、投手力共にリーグワーストだったチーム力の底上げを図った。2013年にはブランコ、ソト、ソーサの3選手を中日ドラゴンズから引き抜き、5年ぶりの最下位脱出。毎年40あった借金を15にまで減らし、久しぶりにペナントレースを争うまでになった。
毎年のドラフトに寄り着実に戦力を増やしていき、ついに今年のチームにおいては先発ローテーションだけでも井納、石田、今永、久保、モスコーソ、三嶋、砂田とDeNAになってから獲得した選手が中心となった。野手に関しても桑原、倉本、宮崎、梶谷、筒香と中畑政権になり大きく育った選手が中心となった。チームの若返りの成功はもちろんだが、辛抱強く若手の起用を行った中畑監督の功績は大きい。

そんなチームにとって大きな転換期を迎えたDeNAへの売却だったわけだが。もう一つの転換期は2015年に訪れた。

2015年シーズンは4月から絶好調でリーグを牽引、5月中に貯金10を作り独走していたベイスターズ。優勝ないしAクラス入りは確実とささやかれていたが交流戦以降は急転直下。前半戦終了時点で首位だったチームはみるみる内に調子を落とし、最終的には6位に転落、プロ野球史上初の出来事だった。さらにはDeNA以降4年間監督を務めていた中畑監督がこのシーズンを持って退任を発表と激動の1年を過ごしたのだ。このシーズンの収穫と言えば、先発左腕の充実と筒香嘉智の独り立ち、クローザー山崎康晃の成功だろう。何よりシーズン途中まで初めて首位を過ごしたという経験と途中から急降下したことにより、よりハングリーに勝利を意識することが出来たのではないだろうか。

そしてDeNA初の助っ人外国人になったアレックス・ラミレス氏を監督に招聘して臨んだ2016年シーズン、DeNAの逆襲が始まる。

就任当初、ラミレス監督に対して否定的な声が多く聞かれた。1年間独立リーグで過ごしていたことや、監督経験が無いことなど確かに懸念材料自体は少なくなかっただろう。だが私個人の意見で言えばラミレス監督は歓迎、好意的に受け止めていた。以前より氏の監督への情熱は知っていたし、NPBで監督をすることを誰よりも熱望していた。そのために独立リーグでの勉強をしてきたこともわかっていた。2001年からヤクルトでプレーし、12年間で2000本安打を放った歴代屈指の助っ人外国人であるラミレスがデータや傾向を軽んじているわけがないとも思っていた。そんな彼が監督を務めるにあたり、私は当初から失敗するわけがないと考えていた。

当初話題をさらったのは、ラミレス監督の「配球はすべてこちらで指示をする」という発言だった。つまりチームの捕手の配球を信用していない、ひいては捕手の実力不足を指摘した。それもそのはず、2015年度のチーム捕逸・暴投数は78と断トツの最下位。サヨナラパスボールや負けにつながる捕逸が多く見られた。投手の責任もあるが、捕手による部分が大きいとラミレス監督は断じた。
実際のところ捕手によって捕逸の数は大きく変わることがある。千葉ロッテマリーンズのキャッチャーを15年務めた里崎智也は15年間で通算19個しか捕逸を記録していない。この数字はまさに圧倒的と呼べるもので、出場試合数でみると53試合に1回という圧倒的に少ないペースだ。90年代最高の守備型キャッチャーだった古田敦也でも19試合に1個のペースで記録していただけに、この数字の異常さがわかってもらえるだろう。(ちなみにパスボールと暴投の違いは、投球が大幅に逸れるかワンバウンドした場合を暴投、バウンドせずキャッチャーに到達している場合はおおむねパスボールと判定される。)

ここで春キャンプ中にラミレス監督が積極的に起用していったのが2015年ドラフト4位で獲得した新人キャッチャー戸柱恭孝だった。26歳の戸柱は昨年まで社会人野球でプレーしていた叩き上げの選手。それだけあってインサイドワークの熟練度はプロレベルであり、配球に関してもインサイドの使い方をラミレス監督より好評を受けており、配球は戸柱自身に任せる旨の発言を早々に行っていた。見事正捕手の座を射止めた戸柱は開幕戦からスタメンに名を連ね、週6試合のうち5試合を戸柱、山口の先発試合を高城という2人態勢でシーズンをスタートさせた。その効果はあったのだろう。5月終了時点で横浜は12球団1のチーム防御率を記録していた。新人捕手にとってはかなり大変なシーズンになっただろうが、戸柱の功績も今シーズンの躍進に大きく寄与していたと断言できるだろう。
ちなみに今シーズンのチーム捕逸数は現時点で48、昨年から30個も減らすことに成功している。

シーズン開幕当初は例年通りの低空飛行、4月中に早くも借金を10作ってしまった。主力の梶谷をキャンプ中の怪我で欠き、1番に抜擢した白崎の不調、今年獲得した新外国人ロマックの絶望的な打力とそれに引っ張られて全員の打撃が不調に陥っていた。投手陣が好投を続けていただけにかなりもどかしい試合が多く、私が今シーズンワーストに上げたい試合は4月5日の中日ドラゴンズ戦、相手先発若松から8安打を放ち4四球もらっても1点も取れず、逆に杉山の3塁打と若松の犠牲フライの1点を取られて負けた試合だ。さらにその次の試合で小熊に完封負け、次の試合も1-1の延長引き分けと致命的に点が取れない状況が続いた。そして前述のとおり出来上がったのが借金10、今年もダメなのかとファンの脳裏によぎったが、ラミレス監督はこう言い放った。「5月で貯金を10作り、5割に戻す。」

そんなバカなことがあるかと他球団どころか自チームのファンにまで笑われそうな発言だったが、梶谷の復帰が起爆剤となり5月から打線が上向き始める。そしてこの5月から今年の躍進を支えた2人の選手が起用され始めた。桑原と宮崎の2人だ。桑原は2014年から一軍出場機会を少しずつもらっていたものの、2015年は打撃の不調がありレギュラー奪取はかなわなかった。しかし2016年シーズン、当初の1番白崎計画が頓挫すると、日替わりで関根、乙坂、桑原といった外野の若手が1番を務めるようになる。その中でも選球眼があり、守備もそれなりにこなしていた桑原をラミレスは1番に抜擢、そこからはガッツあふれるプレーと意外なパンチ力と得点圏打率の高さで見事1番センターのスタメンを獲得、現時点で.277 11本 49打点 出塁率.350と、代打成績の良いDeNAは下位からチャンスを作ることも多く、そのランナーを帰す役目として非常に大きな働きをしている。2011年ドラフト4位で指名され、今年の大卒ルーキーと同い年になる彼の今シーズンに懸ける思いは非常に強かったに違いない。
そしてもう一人が宮崎だ。DeNAのウィークポイントはサードとセカンドだった。白崎がサード失格の低打率によりスタメンすら取れなくなり、サードとして獲得したロマックも打てない上にサードが守れないという体たらく、さらにセカンド石川も1割と2割を推移していた上に守備がイマイチと他球団に比べてあまりに弱かった。当初は右投手の時は石川、左の時は宮崎という左右で使い分けをされていたが、宮崎がどんどん結果を出し次第に右投手相手でも起用されるようになっていった。懸念されていた三塁守備も次第に良くなり、気が付けば3番や5番の中軸を任されるバッターになっていった。宮崎も今シーズン 313打席で.278 10本塁打 34打点 出塁率.351を残しており大社卒の遅れてやってきた88年世代として活躍している。併殺が多いのがややネックだが、天性のバッティングセンスで三振が少なく、逆方向への強い打球が持ち味だ。

そして5月反攻最大のカギはロペスの復調だった。4月中は1割代に落ち込んだ打率から5月に爆発、筒香と倉本だけが頑張って3割付近をキープしていた孤立無援打線からようやく脱却することに成功したのだ。
そして5月を17勝7敗1分で終え、本当に宣言通りに5月での借金完済を果たしたのだ。

そして鬼門の交流戦を迎える。昨年は貯金10で突入した交流戦だったが、ふたを開けると3勝14敗1分けと11もの負け越しを果たし一気に急降下していった。まさに昨年の悪夢が頭にある中臨んだ今年の交流戦は何とも変な結果だった。1勝2敗で終えた西武戦以外はロッテとオリックスに3連勝、ソフトバンク日ハム楽天に3連敗と非常に極端な結果に終わった。なんとか7勝11敗の借金4つに抑えたが、また借金生活へ戻ってしまった。しかし交流戦明けの巨人阪神戦は5分以上で乗り切り、10勝13敗で悪夢の6月を乗り切った。

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#197 熱戦に次ぐ熱戦「第98回全国高校野球選手権大会を振り返る」

 リオオリンピックに日本中が沸く中行われた第98回全国高校野球選手権大会が幕を閉じた。今年は1962年の春夏連覇以来54年ぶりに栃木代表の作新学園が優勝した。準優勝を収めたのは南北海道代表の北海高校、創部116年にして初の決勝進出を果たした。栃木対北海道という目新しい決勝の組み合わせもそうだが、今大会は予選で強豪校が次々と破れたために新鮮な顔ぶれが並んだことも印象に深い。今や高校野球界をリードする大阪桐蔭高校を始め、春夏通算最多出場数を誇る龍谷大平安、今春の優勝校である智弁学園、昨春の優勝校である敦賀気比、昨夏の優勝校である東海大相模、明治神宮大会を制した高松商業などが敗退と波瀾尽くしの予選となった。

 前評判では超高校級のピッチャーを擁する履正社、横浜、花咲徳栄の前評判が高く、それを作新学院、秀岳館、東邦が次ぐという構図だった。
しかし本戦も波瀾が待っていた。高校BIG3と称された寺島、藤平、高橋を擁する履正社、横浜、花咲徳栄の3校が2回戦と3回戦で相次いで敗北を喫した。どのチームも共通していたのは、エースの温存が裏目という部分だった。夏の甲子園の日程は勝ち進めば勝ち進むほど厳しくなり、なおかつ相手も強くなる。そのため一回戦二回戦のうちにどこかで思い切ってエースを休ませるという選択肢も一つ重要になってくる。しかし高校野球でエース級を複数人用意することは容易ではない。特に超高校級のピッチャーを擁していれば、それに匹敵するほどの控えなんてものはそうそういるものではない。どのチームもエース対策を重ねてくる分、控えピッチャーでは打ちこまれてしまうケースも多い。近年高いレベルで2人の投手を立てていたのは昨年の東海大相模があげられる。左右のエース小笠原と吉田は両者MAX150km越え、二人ともドラフトに掛かった選手だった。

今大会ではまず横浜対履正社の一戦でエースを温存した横浜が、控え投手を打ちこまれ敗退。そしてその履正社もエース寺島を3回戦で温存し常総学院に敗れた。エースの唯一温存に成功したのは作新学園、エース高橋を温存した花咲徳栄から早々に5点を獲得し、今井が2失点完投勝ち。準決勝の明徳戦では早々に試合を決めて控えにバトンタッチした。
気休め程度だが、決勝前日に5イニングで降りられたことは決勝の相手に対して少しアドバンテージを取れたのではないだろうか。その作新学園と決勝を戦った北海高校は、エース大西が全試合完投で勝ち上がってきた。決勝では両者ともにやはり疲れが見えたが、ここで明暗を分けたのは積極的な打撃策を取った作新だろう。疲れても150kmを投げ込む今井に対して、大西は140km前後の速球。鍛えられた作新ナインにとって十分に打てる球だったのだろう。今井の投球と、作新の守備は非常に気合が入っており、好守備も多く見せていたように思う、バントを仕掛けない攻撃的な采配も光った。作新学院はまさに優勝校にふさわしい野球を行っていたように思う。
対する北海も決勝までは非常にそつのないプレーで手堅く勝ち進んできた。秀岳館や聖光学院戦で見せたプレーはまさに強豪校のそれだったと言える。昨春決勝にまで進んだ東海大四もそうだが、近年また北海道勢の躍進が見えてきた。11年前の駒大苫小牧以来の優勝もそう遠くないように思える。

そして今大会のベストバウトをあえて挙げるなら、やはり八戸学院光星対東邦だろうか、一時は7点差が付いたこの試合、絶望的な点差をはねのけ東邦高校が勝利を収めた試合だ。東邦高校は前評判は高かったものの、今大会予選からエース藤嶋が不調だった。早々に6点を入れられ藤嶋はノックアウト、変わった松山も3失点で9点を失ってしまう。しかし東邦は少しずつ点を取り返し、9回を迎えた時点で9対5、八戸学院光星のピッチャーは桜井、東邦は7回と8回に桜井から点を取っており、攻略できそうな雰囲気があったのは間違いなかった。9回に入り、先頭の鈴木がヒットで出塁、この時点で会場のボルテージがアップし始めた。次の浜崎はアウト、3番の松山はヒットで続く。4番の藤嶋がアウトになりいよいよ終わりかという空気が流れだすが、5番の小西がヒットでつなぎ満塁、6番には代打の中西がタイムリー、なおも満塁で7番高木が同点に追いつく3点タイムリーツーベース、そして最後は鈴木理のサヨナラタイムリーで4点差をひっくり返した。
高木がタイムリーを放った時点で甲子園は完全に東邦の応援に傾いていた。アルプスのみならずバックネット裏席まで東邦の応援であるタオルまわしを行うほどだった。甲子園に来る一般の観客のほとんどは地元のチーム以外で応援するチームを持っていない。なので地元以外の2チームの対戦になると、「負けそうなチームを応援する」という流れが起きやすい。そしてその意識が生み出す流れは選手をも飲み込む。これはまさに「甲子園の魔物」と呼ばれるものだろう。それが八戸学院光星に牙をむいた瞬間だった。

事実完全に空気に飲み込まれてしまった光星バッテリーはタイムを取る余裕すらなく、最後のバッターに向かっている。監督も冷静な判断力を失いきってしまっていたのだ。

目評判とは打って変わって非常に盛り上がった今大会、既に春の選抜に向けて新チームは始動している。また次の大会を楽しみにしたい。

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