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#199 大願成就「今年の横浜DeNAベイスターズを振り返る後編」



そしてシーズン折り返しにあたる7月、頼れるキャプテンのバットが火を噴く。6月終了時点で16本塁打をマークしていた筒香、対する山田は26本をマークし独走、本塁打王はもうすでに決まったものと思われていた。どうしても比較されやすい両者だったが、山田が交流戦でパ全球団からホームランを放つなどド派手な活躍をしていたこともあり、16本中15本をハマスタで打っていた筒香は「ハマスタ専」のレッテルを貼られていた。しかし筒香はこの7月、周囲の度肝を抜く活躍を見せる。月間成績は.429 16本 31打点という衝撃の数字が並んだ。月間16本は球団記録、7月19日20日22日の3試合で史上初3試合連続1試合2ホーマーと月間6度のマルチホームランの2つの日本記録を打ち立てた。さらにはこの月に行われたオールスターでも2ホーマーを放ち圧倒的な存在感を見せつけた。夏場に差し掛かり投手陣に疲れが見えてきたこのタイミング、筒香の勢いに引っ張られるように打撃陣全体が上向き、打撃戦をものにすることが出来た。そして個人成績でも、10本差つけられていた山田に追いつき、本塁打王争いのトップに立ったのだ。
7月はチーム防御率が大きく落ち込んだものの、打線の頑張りもあって14勝10敗と四つの勝ち越しを決めた。 

一抹の不安を感じつつ臨んだ8月、後半戦はエース山口不在の中始まった。このあたりからついに中継ぎ陣に綻びが見え始める。絶対的守護神だった山崎康晃の不調が深刻化してきたのだ。8月頭の阪神戦。この3試合、3タテ出来たはずの試合運びだったが、その内2試合で山崎が打ち込まれ逆転負け、さらには次のカードの中日戦でも山崎が逆転を許した。1週間で3度のセーブ失敗は非常に大きく、いまだかつてないその不調にラミレス監督は配置転換を決断、一時的に須田、田中を日替わりでセーブ機会に登板させる策を取った。7月あれだけ猛威を振るった打線も8月に入ると一気に湿りがちになり、先発が初回に炎上していきなり試合を終わらせてしまうケースも一気に増加した。極めつけは4位阪神と3.5ゲーム差で臨んだ8月23日~25日の3連戦。初のCSに向けて何としても踏ん張らなくてはいけないこの3連戦であまりにみじめな3連敗を喫する。ついぞ迫るは0.5差、明日にでも順位が変わってもおかしくないこの状況で一つ意地を見せたのはDeNAだった。
次の日からの巨人3連戦をなんと3タテで突破する。運よく阪神は3連敗を喫しており、この時点でゲーム差がまた3.5に戻ったのだ。その次の広島戦でも3タテをくらったものの、阪神も同じく泥沼の連敗劇でゲーム差は縮まらず。逆に5位のヤクルトが盛り返し4位を取り戻したのだった。8月は9勝15敗の6つの負け越し、非常に苦しい月だった。

そして4位ヤクルトと2.5ゲーム差で突入した勝負の9月、ここで踏ん張りを見せたのは先発陣だった。9月2日から甲子園で迎えた阪神3連戦、今年のベイスターズは非常に阪神に分が悪くこの時点で5勝13敗と8つも負け越していた。先のカードでも3タテを食らっていたためイヤな雰囲気を持っていたのだが、ここで石田が7回2失点、翌日の山口も7回2失点で2連勝を飾ると、3試合目も今永が好投しロースコアのゲームに持ち込んだ。この3連戦でどこか苦手意識を払拭できたようなイメージがある。続くヤクルトとのCS天王山では裏ローテながら井納が魂の1失点完投で勢いを作ると、三嶋が今シーズン初勝利を挙げる6回3失点で苦手小川に投げ勝つ。しかしまたしても3戦目に好投石田の勝ちを田中が消してしまう。とりあえず無事2勝1敗で勝ち越し、ヤクルトにプレッシャーをかけた。打線もここから調子を取り戻し、投打がかみ合う試合が多くなった。9月13日の試合でヤクルトに大勝し、ここでついにCSマジック6を点灯させた。翌阪神戦も勝ち越し、最後の広島2連戦もロペスの大活躍もあり2連勝を飾り一気にマジックを減らし、無事3位を確定させた。

他球団ファンからすれば、「なんだCSに出たぐらいで」という反応があるかもしれない。しかしこの10年間に味わった屈辱とふがいなさ、昨年味わった呪いのような負けに「Aクラス入りすら夢のまた夢なのか」という気持ちが支配しつつあった。そんな中でようやくつかんだAクラス。チームの成長を見届けてきただけに単純にうれしかった。

今年は若手野手の台頭はもちろんのことだが3割40本100打点を達成した筒香の活躍、自身キャリアハイの30本越えを果たしたロペスの二人の軸がどっしり構えていたのは大きい。そしてショートの倉本も通年で3割打ちながらショートをキープしていたことなど昨年を大きく上回る成績を残した。そして今年何より頑張ったのは投手陣だろう。

まずは山口、開幕前にラミレス監督から早いうちに開幕投手の指名を受けていたものの足首のねん挫で結局お流れになった。ラミレス監督が現役時代に山口を言葉を交わしており、その時に「僕が監督になったら、エースは君を指名する。」というやり取りがあったそうで、その言葉を裏切らない投手起用となった。今季は3度の故障離脱により規定投球回こそ達成できなかったものの、19試合で138回を投げ、平均投球回ではリーグトップクラスの7.2回を記録する。11勝5敗の成績を残すが完投5回、完封3回は圧巻。9回に150kmを投げる抜群のスタミナを誇り、130球までは余裕で投げられると本人は語る。おそらくラミレス監督が一番信頼を置いている投手だろう。シーズン頭は5失点する日などもあったが、シーズン中盤からは非常に安定したピッチングをし、その活躍たるやまさにエース。防御率も2.86と申し分ない数字となっている。問題といえばそのねん挫癖と緩慢なフィールディングだろうか、そこさえ改善されれば12球団でもトップクラスの能力を持っているだろう。今年FAを取得した山口がどのような選択をするだろうか。もしDeNAを抜けるならば、来年は非常に厳しい戦いを強いられることになる。

二人目は石田、昨年シーズン中盤から頭角を現した2年目左腕。今年は開幕から素晴らしいピッチングを展開した。交流戦前までは菅野、岩貞に次ぐ防御率リー3位をキープ。持ち前のキレのあるストレートとチェンジアップのコンビネーションで凡退の山を築く。しかしながらこちらはスタミナが少なく、長くとも7回でマウンドを降りることが多い。後続に勝ちを消されるケースが多く、今シーズンだけでも5度勝ちを消されている。なかなか無援護体質の持ち主だ。そんな中でも150イニング投げたことは評価したい。1年間ローテを守り切った証なのだから、今年は不運にも勝ち星に恵まれなかったが、来年は最多勝狙ってほしい。

三人目は今永、昨年のドラフト1位で入団したまさにゴールデンルーキー。一時は大学NO.1ピッチャーの呼び声も高かったが、故障を経験し横浜が単独指名で獲得。続々と指名回避したチームをあざ笑うかのように好投を繰り広げた。しかし序盤の好投もことごとく味方の貧打に泣かされ、勝ちが付いたのは先発5戦目にして初だった。どうやら対巨人の成績だけは悪いが、その他の球団はすべて1点台に抑えており、特に今年の広島相手に3勝1敗1.65と圧倒的な成績を残している。石田が柔の左腕なら今永は剛の左腕だろう。ストレートやスライダー、カーブを使うそのピッチングスタイルは往年の杉内俊哉を思わせる内容だ。今年注目をさらに集めたのは今永語録と呼ばれるその求道者的な発言の数々だ。「援護がないという言い訳は防御率0点台の投手だけが言える」、初勝利の際には「広島ではなく、過去の自分に勝った」などその自らに厳しく、どこか哀愁のある独特の言い回しは早速プロ野球ファンの注目の的になった。6月末からオールスター明けに掛けて一度休養を挟んだため、規定には少し足りないが、1年目から130イニングで8勝8敗、2.68は非常に立派な成績だと言えるだろう。

先発で言えばこの3人の活躍は非常に大きかった。その他でも規定をクリアした井納は、今年こそ負け越したけれども、来年は2ケタ勝ってほしい。不用意な一発に泣くシーンや、序盤から連打されるシーンもちょくちょく見かけたので、そのあたり修正してほしい。
三嶋は来季に向けていいアピールが出来たのではないだろうか、以前のようなストレートが鳴りを潜めたのは寂しいが、しっかり6回を投げ切って試合を作れることを終盤戦でアピール。来季はローテ入りする可能性も高いだろう。
今期伸び悩んだ印象が強いのは砂田だろうか、シーズン頭はローテに食い込んでいたが、徐々にスタミナ不足と決め球不足に悩まされた。同郷の先輩のヤクルト石川を習って、しっかり投球術と勝負のできる変化球を身に着けてほしい。期待外れだったのはモスコーソと久保だろう。どちらも規定を投げてほしいという期待があったものの、故障で調子が上がらなかったのか、打ちこまれるシーンが目立った。モスコーソは終盤復帰し何とか健在っぷりをアピール、来期に向けて切られることはないだろうが、第一子が生まれたこともあり、頑張ってほしいところ。

そして今年を支えたといってもいい、ブルペン陣だ。

まずは田中健二朗、昨年は後半戦を2軍ですごしかなりのふがいなさを自分で感じていたよう。その反省もあってか今年に懸ける意気込みはすさまじいものがあった。横浜では貴重な左のセットアッパーなだけに、7回のみならず左が続く場面ではスクランブルで登場するシーンも多い、さらには僅差のビハインドでの登板機会も多かった。そんな彼が今年は60試合近く投げてくれたのは非常に大きなポイントだった。9月に入りさすがに疲れが出たか、打ちこまれるシーンも目立ったものの、8月の終わりまで1点台をキープし続けてくれていた。大きく曲がるカーブとスライダー、キレのあるストレートを投げ込む。特にカーブは相手の腰が砕けるような軌道を描き、タイミングをずらす決め球となっている。

そして須田幸太、先発として芽が出なかった須田だが、昨年から中継ぎとして定着。彼も今年60登板を果たした。彼のピッチングで特筆すべきはそのコントロールとストレートのキレだろう。彼のピッチングのコースを見ると恐ろしいほどに外角低めにストレートが集まる。そこを起点にフォークやカットボールで打ち取って行くスタイルだ。今年は自己最速の150km/hもマークし多くの見逃し三振を奪った。須田もスクランブルやビハインドの登板が多く、非常に負担が掛かるポジションだったが見事投げ抜いてくれた。今年は満塁で広島菊池を見逃し三振に切ったカットボールがベストボールだっただろう。

今年全体的に不安を残したのは三上と山崎の2人だった。彼ら二人が1年目に見せた見事なピッチングからは少し残念な場面が目立ったように思う。三上はなんだかんだ2点台に抑えているものの、やはり問題は山崎だろうか。去年の圧倒的なピッチングとツーシームの強烈な変化はなりをひそめてしまった。三者凡退に切った試合の方が少なく、今年は負けが5つもついてしまった。なんだかんだ2人とも60試合に登板しているため、責められないが、もっとできる力を持っているのは横浜ファンが一番知っている。来季はビシッと最優秀ホールドと最多セーブのタイトルをこの二人に持ち帰ってほしい。

そしてビハインドリリーフ陣、ザガースキーがビハインドで一番投げたピッチャーだろうか、とにかくリリーフとして出てくると四球を出す、とにかく出す。勝ち継投で出てこないため負けはなかなかつかないが、防御率は5点台と傷口を広げてしまうケースが多かった。もし代わりになる投手がいるなら連れてきてほしい。小杉は3点台に抑えまあ及第点だが、もう少しイニングを任せてもらえるよう頑張らなくてはいけない。そして一人春先の大変な時期に頑張ってくれた投手がいる、トレードでやってきた藤岡だ。春にやってきて10試合ほど投げて無失点のまま肘の違和感で2軍に落ちてしまった。もし彼が怪我で落ちなければもう少しブルペンが楽になったんじゃないかと思う。昨年活躍した長田や林を欠くという地味に中継ぎが苦しかったDeNA、この急場をしのいだ4投手には頭が上がらない。

そして今年のDeNAを語る上で外せないのは代打成績の良さだろう。8月まで代打成功率3割をキープという異様なまでに頼れる代打陣だった。乙坂山下は4割近い数字を残し、下園はここぞの場面で結果を残した。なぜか白崎も代打で3割以上を残している。そして右の代打の後藤も左投手に弱いのがネックだが、それでも3割近い打率だ。倉本から始まる下位打線でも点が取れていたのは、ひとえにこの代打陣の頑張りだろう。

そして今シーズンやはりDeNAを支えたのはやはり4番の筒香だろう。 .326 43本 107打点(9月25日時点)で本塁打打点の2冠、打率でも3位につけており、圧倒的な打棒を見せつけている。しかも得点圏打率もリーグトップの.389、出塁率も.435でリーグ2位とまさにセ・リーグ最強打者と言っても過言ではないだろう。昨年は.320 26本の数字を残しており、このまま30本打てればいいねと言われていたが、更に筒香は一皮剥けた活躍をしたのだ。昨年までの課題だった広角へ打ち分けるという技術の習得に、筒香は取り組んでいた。プレミア12の終了後、ドミニカのウィンターリーグへ即参戦。メジャーリーガーなども参加するハイレベルなリーグで、ムービングボールやスピードボールへの対策として身に付けたすり足打法。相手の球を見極める時間を長くとることで懐に呼び込み、自然と逆方向への強い打球が打てるようになった。この打法が成熟したのはおそらく6月に入ってからだろう。4月中はなかなか上手く噛み合わなかったのか打率も3割を切っていた。おそらくモノにしたであろう7月以降は前述のとおり、鬼神のような打撃でチームを引っ張った。日本の四番がチームにいるという贅沢さをかみしめたい。

今シーズンも残すところあと2試合、1試合勝てば15年ぶりのシーズン5割以上が決まる。2連勝すれば2位浮上の可能性さえ出てくる。最後の踏ん張りを期待する。そしてCSでの頑張りも期待だ。頑張れベイスターズ。
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テーマ : プロ野球
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