スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

#198 大願成就「今年の横浜DeNAベイスターズを振り返る前編」


 9月19日、ついにファンの願いが1つ叶った。横浜DeNAベイスターズが広島東洋カープを3-1で下し、11年ぶりのAクラスと初のクライマックスシリーズへの出場を決めた。今回はDeNAベイスターズの今年の戦いを前後編で振り返りたいと思う。


ここ10年間で7度の最下位と2度の5位とまさに暗黒真っただ中にあったベイスターズだったが、11年オフに親会社がTBSからDeNAに変わり、少しずつ風向きが変わってきた。巨人OBの中畑清氏を監督に招聘、まずは雰囲気や体質から変え始めた。そして一新されたフロントは高田繁GMをトップに据え、5か年計画でチーム作りをスタート。当初は打力、投手力共にリーグワーストだったチーム力の底上げを図った。2013年にはブランコ、ソト、ソーサの3選手を中日ドラゴンズから引き抜き、5年ぶりの最下位脱出。毎年40あった借金を15にまで減らし、久しぶりにペナントレースを争うまでになった。
毎年のドラフトに寄り着実に戦力を増やしていき、ついに今年のチームにおいては先発ローテーションだけでも井納、石田、今永、久保、モスコーソ、三嶋、砂田とDeNAになってから獲得した選手が中心となった。野手に関しても桑原、倉本、宮崎、梶谷、筒香と中畑政権になり大きく育った選手が中心となった。チームの若返りの成功はもちろんだが、辛抱強く若手の起用を行った中畑監督の功績は大きい。

そんなチームにとって大きな転換期を迎えたDeNAへの売却だったわけだが。もう一つの転換期は2015年に訪れた。

2015年シーズンは4月から絶好調でリーグを牽引、5月中に貯金10を作り独走していたベイスターズ。優勝ないしAクラス入りは確実とささやかれていたが交流戦以降は急転直下。前半戦終了時点で首位だったチームはみるみる内に調子を落とし、最終的には6位に転落、プロ野球史上初の出来事だった。さらにはDeNA以降4年間監督を務めていた中畑監督がこのシーズンを持って退任を発表と激動の1年を過ごしたのだ。このシーズンの収穫と言えば、先発左腕の充実と筒香嘉智の独り立ち、クローザー山崎康晃の成功だろう。何よりシーズン途中まで初めて首位を過ごしたという経験と途中から急降下したことにより、よりハングリーに勝利を意識することが出来たのではないだろうか。

そしてDeNA初の助っ人外国人になったアレックス・ラミレス氏を監督に招聘して臨んだ2016年シーズン、DeNAの逆襲が始まる。

就任当初、ラミレス監督に対して否定的な声が多く聞かれた。1年間独立リーグで過ごしていたことや、監督経験が無いことなど確かに懸念材料自体は少なくなかっただろう。だが私個人の意見で言えばラミレス監督は歓迎、好意的に受け止めていた。以前より氏の監督への情熱は知っていたし、NPBで監督をすることを誰よりも熱望していた。そのために独立リーグでの勉強をしてきたこともわかっていた。2001年からヤクルトでプレーし、12年間で2000本安打を放った歴代屈指の助っ人外国人であるラミレスがデータや傾向を軽んじているわけがないとも思っていた。そんな彼が監督を務めるにあたり、私は当初から失敗するわけがないと考えていた。

当初話題をさらったのは、ラミレス監督の「配球はすべてこちらで指示をする」という発言だった。つまりチームの捕手の配球を信用していない、ひいては捕手の実力不足を指摘した。それもそのはず、2015年度のチーム捕逸・暴投数は78と断トツの最下位。サヨナラパスボールや負けにつながる捕逸が多く見られた。投手の責任もあるが、捕手による部分が大きいとラミレス監督は断じた。
実際のところ捕手によって捕逸の数は大きく変わることがある。千葉ロッテマリーンズのキャッチャーを15年務めた里崎智也は15年間で通算19個しか捕逸を記録していない。この数字はまさに圧倒的と呼べるもので、出場試合数でみると53試合に1回という圧倒的に少ないペースだ。90年代最高の守備型キャッチャーだった古田敦也でも19試合に1個のペースで記録していただけに、この数字の異常さがわかってもらえるだろう。(ちなみにパスボールと暴投の違いは、投球が大幅に逸れるかワンバウンドした場合を暴投、バウンドせずキャッチャーに到達している場合はおおむねパスボールと判定される。)

ここで春キャンプ中にラミレス監督が積極的に起用していったのが2015年ドラフト4位で獲得した新人キャッチャー戸柱恭孝だった。26歳の戸柱は昨年まで社会人野球でプレーしていた叩き上げの選手。それだけあってインサイドワークの熟練度はプロレベルであり、配球に関してもインサイドの使い方をラミレス監督より好評を受けており、配球は戸柱自身に任せる旨の発言を早々に行っていた。見事正捕手の座を射止めた戸柱は開幕戦からスタメンに名を連ね、週6試合のうち5試合を戸柱、山口の先発試合を高城という2人態勢でシーズンをスタートさせた。その効果はあったのだろう。5月終了時点で横浜は12球団1のチーム防御率を記録していた。新人捕手にとってはかなり大変なシーズンになっただろうが、戸柱の功績も今シーズンの躍進に大きく寄与していたと断言できるだろう。
ちなみに今シーズンのチーム捕逸数は現時点で48、昨年から30個も減らすことに成功している。

シーズン開幕当初は例年通りの低空飛行、4月中に早くも借金を10作ってしまった。主力の梶谷をキャンプ中の怪我で欠き、1番に抜擢した白崎の不調、今年獲得した新外国人ロマックの絶望的な打力とそれに引っ張られて全員の打撃が不調に陥っていた。投手陣が好投を続けていただけにかなりもどかしい試合が多く、私が今シーズンワーストに上げたい試合は4月5日の中日ドラゴンズ戦、相手先発若松から8安打を放ち4四球もらっても1点も取れず、逆に杉山の3塁打と若松の犠牲フライの1点を取られて負けた試合だ。さらにその次の試合で小熊に完封負け、次の試合も1-1の延長引き分けと致命的に点が取れない状況が続いた。そして前述のとおり出来上がったのが借金10、今年もダメなのかとファンの脳裏によぎったが、ラミレス監督はこう言い放った。「5月で貯金を10作り、5割に戻す。」

そんなバカなことがあるかと他球団どころか自チームのファンにまで笑われそうな発言だったが、梶谷の復帰が起爆剤となり5月から打線が上向き始める。そしてこの5月から今年の躍進を支えた2人の選手が起用され始めた。桑原と宮崎の2人だ。桑原は2014年から一軍出場機会を少しずつもらっていたものの、2015年は打撃の不調がありレギュラー奪取はかなわなかった。しかし2016年シーズン、当初の1番白崎計画が頓挫すると、日替わりで関根、乙坂、桑原といった外野の若手が1番を務めるようになる。その中でも選球眼があり、守備もそれなりにこなしていた桑原をラミレスは1番に抜擢、そこからはガッツあふれるプレーと意外なパンチ力と得点圏打率の高さで見事1番センターのスタメンを獲得、現時点で.277 11本 49打点 出塁率.350と、代打成績の良いDeNAは下位からチャンスを作ることも多く、そのランナーを帰す役目として非常に大きな働きをしている。2011年ドラフト4位で指名され、今年の大卒ルーキーと同い年になる彼の今シーズンに懸ける思いは非常に強かったに違いない。
そしてもう一人が宮崎だ。DeNAのウィークポイントはサードとセカンドだった。白崎がサード失格の低打率によりスタメンすら取れなくなり、サードとして獲得したロマックも打てない上にサードが守れないという体たらく、さらにセカンド石川も1割と2割を推移していた上に守備がイマイチと他球団に比べてあまりに弱かった。当初は右投手の時は石川、左の時は宮崎という左右で使い分けをされていたが、宮崎がどんどん結果を出し次第に右投手相手でも起用されるようになっていった。懸念されていた三塁守備も次第に良くなり、気が付けば3番や5番の中軸を任されるバッターになっていった。宮崎も今シーズン 313打席で.278 10本塁打 34打点 出塁率.351を残しており大社卒の遅れてやってきた88年世代として活躍している。併殺が多いのがややネックだが、天性のバッティングセンスで三振が少なく、逆方向への強い打球が持ち味だ。

そして5月反攻最大のカギはロペスの復調だった。4月中は1割代に落ち込んだ打率から5月に爆発、筒香と倉本だけが頑張って3割付近をキープしていた孤立無援打線からようやく脱却することに成功したのだ。
そして5月を17勝7敗1分で終え、本当に宣言通りに5月での借金完済を果たしたのだ。

そして鬼門の交流戦を迎える。昨年は貯金10で突入した交流戦だったが、ふたを開けると3勝14敗1分けと11もの負け越しを果たし一気に急降下していった。まさに昨年の悪夢が頭にある中臨んだ今年の交流戦は何とも変な結果だった。1勝2敗で終えた西武戦以外はロッテとオリックスに3連勝、ソフトバンク日ハム楽天に3連敗と非常に極端な結果に終わった。なんとか7勝11敗の借金4つに抑えたが、また借金生活へ戻ってしまった。しかし交流戦明けの巨人阪神戦は5分以上で乗り切り、10勝13敗で悪夢の6月を乗り切った。

テーマ : プロ野球
ジャンル : スポーツ

#197 熱戦に次ぐ熱戦「第98回全国高校野球選手権大会を振り返る」

 リオオリンピックに日本中が沸く中行われた第98回全国高校野球選手権大会が幕を閉じた。今年は1962年の春夏連覇以来54年ぶりに栃木代表の作新学園が優勝した。準優勝を収めたのは南北海道代表の北海高校、創部116年にして初の決勝進出を果たした。栃木対北海道という目新しい決勝の組み合わせもそうだが、今大会は予選で強豪校が次々と破れたために新鮮な顔ぶれが並んだことも印象に深い。今や高校野球界をリードする大阪桐蔭高校を始め、春夏通算最多出場数を誇る龍谷大平安、今春の優勝校である智弁学園、昨春の優勝校である敦賀気比、昨夏の優勝校である東海大相模、明治神宮大会を制した高松商業などが敗退と波瀾尽くしの予選となった。

 前評判では超高校級のピッチャーを擁する履正社、横浜、花咲徳栄の前評判が高く、それを作新学院、秀岳館、東邦が次ぐという構図だった。
しかし本戦も波瀾が待っていた。高校BIG3と称された寺島、藤平、高橋を擁する履正社、横浜、花咲徳栄の3校が2回戦と3回戦で相次いで敗北を喫した。どのチームも共通していたのは、エースの温存が裏目という部分だった。夏の甲子園の日程は勝ち進めば勝ち進むほど厳しくなり、なおかつ相手も強くなる。そのため一回戦二回戦のうちにどこかで思い切ってエースを休ませるという選択肢も一つ重要になってくる。しかし高校野球でエース級を複数人用意することは容易ではない。特に超高校級のピッチャーを擁していれば、それに匹敵するほどの控えなんてものはそうそういるものではない。どのチームもエース対策を重ねてくる分、控えピッチャーでは打ちこまれてしまうケースも多い。近年高いレベルで2人の投手を立てていたのは昨年の東海大相模があげられる。左右のエース小笠原と吉田は両者MAX150km越え、二人ともドラフトに掛かった選手だった。

今大会ではまず横浜対履正社の一戦でエースを温存した横浜が、控え投手を打ちこまれ敗退。そしてその履正社もエース寺島を3回戦で温存し常総学院に敗れた。エースの唯一温存に成功したのは作新学園、エース高橋を温存した花咲徳栄から早々に5点を獲得し、今井が2失点完投勝ち。準決勝の明徳戦では早々に試合を決めて控えにバトンタッチした。
気休め程度だが、決勝前日に5イニングで降りられたことは決勝の相手に対して少しアドバンテージを取れたのではないだろうか。その作新学園と決勝を戦った北海高校は、エース大西が全試合完投で勝ち上がってきた。決勝では両者ともにやはり疲れが見えたが、ここで明暗を分けたのは積極的な打撃策を取った作新だろう。疲れても150kmを投げ込む今井に対して、大西は140km前後の速球。鍛えられた作新ナインにとって十分に打てる球だったのだろう。今井の投球と、作新の守備は非常に気合が入っており、好守備も多く見せていたように思う、バントを仕掛けない攻撃的な采配も光った。作新学院はまさに優勝校にふさわしい野球を行っていたように思う。
対する北海も決勝までは非常にそつのないプレーで手堅く勝ち進んできた。秀岳館や聖光学院戦で見せたプレーはまさに強豪校のそれだったと言える。昨春決勝にまで進んだ東海大四もそうだが、近年また北海道勢の躍進が見えてきた。11年前の駒大苫小牧以来の優勝もそう遠くないように思える。

そして今大会のベストバウトをあえて挙げるなら、やはり八戸学院光星対東邦だろうか、一時は7点差が付いたこの試合、絶望的な点差をはねのけ東邦高校が勝利を収めた試合だ。東邦高校は前評判は高かったものの、今大会予選からエース藤嶋が不調だった。早々に6点を入れられ藤嶋はノックアウト、変わった松山も3失点で9点を失ってしまう。しかし東邦は少しずつ点を取り返し、9回を迎えた時点で9対5、八戸学院光星のピッチャーは桜井、東邦は7回と8回に桜井から点を取っており、攻略できそうな雰囲気があったのは間違いなかった。9回に入り、先頭の鈴木がヒットで出塁、この時点で会場のボルテージがアップし始めた。次の浜崎はアウト、3番の松山はヒットで続く。4番の藤嶋がアウトになりいよいよ終わりかという空気が流れだすが、5番の小西がヒットでつなぎ満塁、6番には代打の中西がタイムリー、なおも満塁で7番高木が同点に追いつく3点タイムリーツーベース、そして最後は鈴木理のサヨナラタイムリーで4点差をひっくり返した。
高木がタイムリーを放った時点で甲子園は完全に東邦の応援に傾いていた。アルプスのみならずバックネット裏席まで東邦の応援であるタオルまわしを行うほどだった。甲子園に来る一般の観客のほとんどは地元のチーム以外で応援するチームを持っていない。なので地元以外の2チームの対戦になると、「負けそうなチームを応援する」という流れが起きやすい。そしてその意識が生み出す流れは選手をも飲み込む。これはまさに「甲子園の魔物」と呼ばれるものだろう。それが八戸学院光星に牙をむいた瞬間だった。

事実完全に空気に飲み込まれてしまった光星バッテリーはタイムを取る余裕すらなく、最後のバッターに向かっている。監督も冷静な判断力を失いきってしまっていたのだ。

目評判とは打って変わって非常に盛り上がった今大会、既に春の選抜に向けて新チームは始動している。また次の大会を楽しみにしたい。

テーマ : 高校野球
ジャンル : スポーツ

#196 史上最強のスプリンター「ウサイン・ボルトについて改めて思う」

 世界一かけっこが早い人は?今やそう問われれば全世界の人が「ウサイン・ボルト」と答えるだろう。陸上競技の花形である100m走、200m走、4×100mリレーの3種目で世界記録をもち、2008年の北京オリンピックを皮切りに2015年までの世界陸上とオリンピックではフライングで失格になった大邱大会の100m以外の3種目で優勝を続けている陸上短距離界、ひいてはスポーツ界の英雄である。

 そんなボルトがまた偉業を達成した、8月15日に行われたリオオリンピック100m走決勝にて9秒81の記録で優勝。北京、ロンドン、リオの3大会連続での金メダルを獲得。100mでのオリンピック3連覇は史上初の偉業であった。瞬発力と筋肉量がものをいう陸上界における選手寿命は短い。早ければ20代後半には引退を表明する選手も少なくはない。そんな中ボルトは今年30歳、リオオリンピック後の引退を示唆する発言は行っていたものの、この年齢でオリンピックの短距離走で金メダルを獲得するということ自体異常と言って差支えがないのではないだろうか。

 私が何よりボルトに敬意を抱いているのはその速さはもちろんのことなのだが、何より2008年以降の世界大会の出場競技においてほぼすべてで優勝している点である。もちろん100mの9.58と200mの19.19の2つの世界記録を持っている人間が負けるわけがないというのは簡単だろう、だがどんな選手だって怪我やコンディション不良などで常に100%の力で走れるわけではない。特にボルトは先天的な脊椎の側弯症により肉離れなどの故障が多い選手でもある。しかも今回のリオオリンピックの国内予選も怪我により走ることさえできなかったのだ。そんな中で本番への調整力はもちろんだが、大舞台での圧倒的な強さや強靭なメンタルはまさに「史上最強」、今回のタイトルを「史上最速」にしなかったのもその強さに敬意を表してのものだ。まさに国際大会負けなしの男が今回も見せた見事なパフォーマンスにはただただ感服するほかない。
 さらにはその高潔なアスリートとしての精神も持ち合わせているというところ、相手への称賛は欠かさず、他国の国家斉唱が別トラックであってもインタビューを中断し斉唱終了まで耳を傾ける。ファンにはお決まりのライトニングポーズで決め、会見では小粋なジョークで記者も沸かせる。競技者、メディア、ファンすべてに気を配るその姿はまさに理想のアスリートと呼べるだろう。

 日本人スプリンター初の9秒台の期待がささやかれている昨今、この男はそれよりも0.5秒先にいる、距離にすればおよそ7m先だ。ただ一人9.7、9.6の壁を破ったボルトは陸上の歴史を20年縮めたと言われる。しかしこのままではボルト一人が20年先の未来からやってきただけで終わってしまう。ボルトに匹敵するスプリンターの出現を東京オリンピックでは期待したい。最後の4×100mリレーで走るボルトの姿は、もしかすると我々が目撃する走るボルトの最後の姿になるかもしれない。

伝説の稲妻が走る姿を最後に目に焼き付けておきたい。

テーマ : 陸上競技
ジャンル : スポーツ

#195 昭和最後の大横綱「千代の富士」

 7月31日、夕食を食べ終え席を立った時、衝撃のニュースが飛び込んできた。元千代の富士、九重親方の死去のニュースだった。その場にいた父と祖母にそのことを告げると、一様に「そんなバカな、千代の富士が死ぬかよ」という声が上がった。この反応こそが氏の凄さを物語っているのだろう。
 幕内優勝31回、生涯勝利数1045勝、幕内53連勝の大記録をもち、昭和最後の大横綱と呼ばれ、絶大な人気を誇った。角界で初の国民栄誉賞を受賞した人物でもある。

 千代の富士は力士のイメージを変えた人物と言っていいだろう。従来から現代まで続く力士の体格からは一線を画したスタイルと言っていいだろうか、現役時は183cm、126kgと力士の中では小兵の部類に入る体格、しかしそれでいて千代の富士が強かったのには理由がある。現役時の画像を見ていただければ一目瞭然ではあるだろうが、とにかく筋骨隆々、鋼の肉体というのはこのこと、でっぷり太ってお腹のでた力士のイメージ像からかけ離れた存在、現役時の体脂肪率は衝撃の10.3%、体重126kgに対してたったの10%だ。特に鋭い目つきと端正な顔立ちから「ウルフ」というニックネームも持ち、今までの力士像からかけ離れたかっこいい力士というイメージを定着させた。

実は力士の体形は大きく二つのパターンに分けられて呼ばれている。ひとつが「アンコ型」、みなさんのイメージする力士像は大抵こちらに該当するだろう。現役の力士で言えば琴奨菊や豊ノ島、千代鳳などが該当するだろうか。大きなお腹で相手の前まわしを取らせづらくし、お腹に相手を乗せて踏ん張りにくくする取り口などがみられるだろう。ただ見た目通り体重がかなり重くなる傾向にあるため、膝の故障率が高くなるケースが多い。数としてはこちらの方が圧倒的に多いだろう。
そしてもう一方が「ソップ型」と呼ばれるタイプ、古くは初代貴乃花を始め、寺尾、琴欧洲、現役力士で言えば日馬富士がこちらのタイプに含まれるだろう。筋肉質でやせ形の力士が該当する。大抵の場合が体質的に太りにくいタイプの力士がこちらの型になっていくケースが多い。相撲のルール上体格がものをいうのは間違いないが、その体格で勝る相手を倒すシーンは大相撲の一つの醍醐味と言っていいだろう。

そして千代の富士もこちらのソップ型に該当する。言うなれば史上最強のソップ型力士といっていいだろう。千代の富士があれほどまでの筋肉を手に入れたのは、一重にトレーニングと猛練習のたまものであったわけだが、一つの切っ掛けとして自身の脱臼癖があった。先天的に肩関節のかみ合わせが浅かった千代の富士、幕下と幕内を行き来していた頃は体が出来上がっておらず、無理な投げを打ち良く脱臼をしていた。ある日全治1年と言われるほどの重度の脱臼をしてしまった際、医師から肩周りの筋肉を鍛えることである程度脱臼癖を抑えることが出来るとのアドバイスを貰って以降、猛烈な筋力トレーニングに励むことになる。この際に千代の富士は角界ではまだほとんど行われていなかったウェイトトレーニングも導入しながら毎日の腕立て伏せ500回を行っていたといい、あまりの猛練習に千代の富士の部屋の畳はすぐ傷んでしまい、3ヵ月に1度張り替えるようになっていたという。

そして脱臼癖は千代の富士の取り口にも変化を与えた。無理な投げを打ち、安定した相撲を取れていなかった千代の富士だったが、前まわしを取って一気に相手を寄り切る高速の寄せの型を作りあげた。猛烈な筋力トレーニングによって千代の富士の体は見違えるように厚みを付け、体重で勝る相手にも寄り切る力をつけたことが奏功し、この型で勝ちを重ねていった。
幕内上位の位置が安定しだしたころ、81年の1月場所を迎える。この時千代の富士の番付は関脇、怒涛の快進撃で初日から14連勝を飾り一躍優勝候補へ踊りでた。千秋楽は13勝1敗で後を追っていた横綱北の湖との決戦。この一戦は北の湖が体格を生かした吊り出しで千代の富士を破り14勝1敗同士の優勝決定戦に持ち込んだ。
千秋楽の一戦で北の湖が足を痛めたところを見逃さず、優勝決定戦では北の湖の周りを回るように攻め、上手出し投げで勝利をおさめ初優勝を飾った。この優勝決定戦の注目度は非常に高く、最高視聴率は65.3%を記録し、いまだにこの数字は大相撲中継の最高視聴率として記録されている。
この優勝で大関昇進を果たした千代の富士は翌3月場所を11勝4敗、5月場所を13勝2敗で優勝次点の記録、そして7月場所に14勝1敗で2度目の優勝を飾り、一気に横綱まで駆け上って行った。81年は関脇、大関、横綱と3つの番付で幕内優勝を飾るという史上初の記録をを残し、日本中を沸かせた。

それからというものの絶対的な強さで土俵を支配しつづけ、10年間にわたり横綱を勤め上げた。先述の大記録は30を超えてから全盛期が訪れた非常に珍しい晩成型だったこともあり、長く相撲を取れたことが要因と言っていいだろう。

千代の富士を語るうえで絶対的な強さはもちろんのことだが、やはり潔さという面も見逃せない。引き際については横綱に昇進した日に師匠にあたる北の富士から潔く引退しようと交わしており、そのXデーは91年5月場所で迎えることになる。
初日から千代の富士対貴花田(後の貴乃花)の取り組みが組まれ、まさに世代交代を予感される一番となった。初対戦となるこの組み合わせで千代の富士は長丁場の末、強引に押し出され敗れる。その後3日目に貴闘力にも敗れ引退を決意、引退会見では「体力の限界、気力もなくなり引退することになりました」と振り絞るように語った。
 
そして引退後は紆余曲折を経て九重部屋と年寄名跡九重を継承、大関となる千代大海を育て上げ、更に幕内に千代鳳、千代丸、千代大龍、千代の国と4人の力士を送り込んだ実績も十分だった。
この先、九重の名跡は佐ノ山親方(元千代大海)が受け継ぐ予定となっている。「千代」の名が、それこそ千代に続くように、九重部屋の力士には頑張ってもらいたい。

大相撲に大きな足跡を残した「小さな大横綱」。死してなおその偉大さに胸を打たれるようだ。また氏のような強い日本人横綱が生まれる日を夢見て締めさせていただこう。

テーマ : 大相撲
ジャンル : スポーツ

#194 さあ波乱はあるか「セ・リーグ前半戦を振り返る」


 去る7月16日、プロ野球界の一大イベントであるオールスターが開催された。ヤフオク!ドームと横浜スタジアムで2試合が行われ、多くのホームランも飛び出すファンを沸かせる試合内容となった。ペナントレースにおいてオールスターはシーズンの折り返しと呼ばれる。正確に言えば143試合中の71試合目と72試合目が折り返しになるのだろうが、球界ではオールスターの前後が目安になっている。(おおよそだが前半80試合、後半60試合というような内訳になることが多い。)

 そして後半戦に移り、ペナントレースはより熾烈を極めていく戦いになる。では今のところのセ・リーグペナントレースを振り返ってみよう。

まずは順位
1 広島
2 巨人
3横浜
4阪神
5中日
6ヤクルト
8月1日現在

交流戦明けからこの順位が続いているように思う。パリーグ相手に貯金を作った広島が一歩抜きでて、2位と10ゲーム近い差をつけて独走している。勝利数も圧倒的だ。数字をみてもチーム防御率、チーム打率ともにリーグトップ。その他あらゆるスタッツで広島が他5球団を圧倒している。7月好調の原動力は新井貴浩、月間打率は4割4分、驚異的な勝負強さで打点を稼ぎ、山田を猛追している。先発にもやや疲れが見えているのだが、恐ろしいことに打線がしっかり取り返しに来るため逆転勝ちが多い、阪神ファンはもう広島を見たくないことだろう。

 続くのは巨人、やはり試合巧者ぶりが光るというか、勝具強さは歴史が積み重ねたものだろうか、広島以外で唯一貯金がある球団でもある。打線がひどいと噂だったが盛り返しつつある。長野1番阿部4番のオーダーに戻してから好調気味だ。それに合わせて先発陣の頑張りも光る、内海も昔の姿を取り戻しつつあり、マイコラスも復調気味ということで、この後半戦頼りになるカードが揃ってきた。中継ぎ陣がお疲れ気味だが、宮國がいいピッチングを重ねており、急場をしのいでいる。メークドラマの再来とささやかれているが、さすがに厳しいとは思うものの、少し広島にも疲れが見えてきていることもあるし、なんといっても7月は14勝7敗の貯金7で終えているというのもある。さあ10月に笑うのは誰だ。

 3位にはなんと横浜が食い込んできている。31日時点で48勝48敗の5分に持ち込み巨人とは2ゲーム差までせまっている。4月最下位、5月に猛チャージ、6月失速、7月チャージと躁鬱のようにチーム状況が変わるおかしなチームだ。今は5月に猛威を振るった投手陣もお疲れモード、今永とモスコーソを2軍に落し、山口が足首捻挫で3週間ほどの離脱と絶望的なニュースが飛び交ったが、ここでチームを救ったのはペトリックと筒香だった。シーズン頭に中継ぎ登板でイマイチだったペトリックがここで先発として登場し、2連勝を飾った。一試合目は5回2失点だったものの、自ら2点タイムリーを放ち取り返した。2試合目は5回無失点の上々なピッチングを見せた。長いイニングが投げられないのは欠点だが、7月のチーム防御率が5点台に届きそうな横浜にあって、3試合連続で5回を2失点以下で抑えており、重要なピースになっている。そして何より湿っていた打線が爆発しているのが今の横浜の強みだろうか、7月の月間MVPの最右翼に躍り出た4番筒香嘉智の活躍を抜きにして語れない。月間16本塁打、5割近い打率を残している。オールスター明けのヤクルト戦から巨人戦にかけての3試合連続マルチホームランは史上初。しかもそのホームランも先制、決勝、勝ち越し、サヨナラと殊勲打ばかり、29日の広島戦では月間6度の1試合2本塁打の新記録を打ち立てた。月初には山田と10本差あった本塁打もついに2日の広島戦で追い越した。7月に入るまで山田の10冠(打率、本塁打、打点、盗塁、最多安打、最高出塁率、最多四球、最高長打率、最多塁打、最多2塁打)が話題になっていたが、ここにきて打撃主要3部門すべてで筒香が追い抜く可能性が出てきた。日本人同士で三冠を奪い合うハイレベルなタイトル争いが見れるのが一体いつ振りだろうか。

4位は阪神、7月に入り失速モードに入ったかと思いきや、中日ヤクルトの急降下と打線の好調が手伝い、何とか4位に盛り返してきた。最大の懸案事項であった鳥谷の連続フルイニングもついに終わりを迎え、ゴメスの復調も手伝い打線が活況となっている。一時期5ゲーム差開いていた3位との差もじりじり詰めて3ゲーム差まで上がってきた。
しかし阪神にまたもや試練が降りかかる。8月に突入するということは甲子園が使用できない死のロードが待っているということ。今年は甲子園であまり勝ててないことを思えばむしろ良い可能性も否定できないが・・・さあどうなる。

5位は中日、おそらく7月もっとも苦しんだチームだろう。月間8勝15敗で7つも借金を作ってしまった。なんというかとにかく投打がかみ合わないという印象。7月の8つの勝利のうち7点以上入れて勝った試合は5試合。大量得点試合の時は投手もしっかり抑えているのだが、いかんせん負け試合でもロースコアゲームが少ない。投手陣が崩壊寸前のところまで来ている印象だ。5失点以上した試合は11試合あったが、そのうち勝ったのは1試合だけ、一方同じように7月炎上しまくった横浜も5失点以上は12試合あったが、それでも4試合勝っている。そもそも横浜は7月14勝9敗で終えているが負け試合で5失点以下は1試合しかなく、炎上と好投がはっきりしているある種潔い内容となっている。高橋周平の1軍復帰もつかの間、このまま落ちていくわけにはいかない。投手陣の踏ん張りが期待される。

6位はヤクルト、一時4位にまで浮上してきたのだが7月最後に6連敗を喫し急降下。8勝14敗と6つの負け越しとなった。ヤクルトの7月も呪われてると言っていいかもしれない。主軸を務める川端と雄平の負傷離脱に加えて、数少ない勝ち継投であるオンドルセクが退団と絶望的なニュースが並んだ。今や山田とバレンティンがいなければどこのチームかわからないと言っても過言ではないラインナップに変貌。山田も腰や足にダメージが蓄積していることを以前より話していたが、その影響か7月はホームランも4本で終え、打点も12で終わり山田独走態勢が終わりを告げた。絶望的な状況だが盛り返すことはできるだろうか。


ざっと振り返ってみたが、AクラスとBクラスにまさに明暗分かれたという感じだ。巨人と横浜は対広島を5割以上で戦っており、独走を止めるにはBクラスの球団の頑張りが必要になってくる。果たして広島は逃げ切れるのか、勝負の8月が始まる。
プロフィール

ppsnuwa

Author:ppsnuwa
趣味に生きたい社会人
野球とF1とゲームと漫画をこよなく愛す
ブログも主にこれらを扱います
10000人来訪ありがとうございます

最新記事
月別アーカイブ
カテゴリ
FC2カウンター
検索フォーム
リンク
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。